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2025.08.25
住友コレクションの3000年以上前の中国青銅器を展示する「泉屋博古館」がリニューアルされたと聞いて、暑い夏の午後に訪ねてきました。 かって住友家別邸の在った一画、京都の地下鉄烏丸線蹴上駅から徒歩約20分ほどの落ち着いた街並みにある建物は、ちょうど前回の大阪万博が開催された1970年の完成だそうで、僕らの世代にはいい感じ(笑)。 やはり優れた建築は時を感じさせず、というか、時の経過とともに益々成熟して風格を増していくようで(人もかくあるべし!)、すごく建築マニアの琴線に触れる美術館でした。これからも季節に応じて、何度も訪ねてみたい場所になりました。 私はこの日もあまりに暑かったので車で行きましたが、駐車場も建物のアプローチと一体となった自然石の舗装がされていて、ちょっと贅沢な気分で気持ち良く入館できました。 玄関を入るとすぐ左手にミュージアムショップが見えます。受付は反対側の右手にあり、JAF割引きを適用していただき機嫌よく入館できました。美術館等ではJAFの会員証を見せると割引になる場合も多いのですが、大方の係の人は黙っていると案内してくれないので(笑)、いつも必ず受付時に確認するようにしています(時々面倒くさがられますが・・)。 入館してすぐの階段を何段か上がると、開放的なホール越しに広々した中庭が目に入ります。階段を多用して建物内のレベル差を設け、変化ある空間構成を生み出す形式も、この時代ならではで、徹底したバリアフリーが求められる現在では、厳しいかも知れません。 床のタイルは「ヘリンボン」と言う貼り方で、我が家の庭のテラスと同じや~という訳で、ちょっと嬉しくなりました。 これがメインの展示施設である青銅器館の入口です。なんと壁面上部の 空調の吹き出し口 も陶器で特注されていました! 吹き抜けになったホールに張り付く階段を少し上がって、一つ目の展示室にアプローチします。縦羽目の木の壁がまるで音楽ホールのような気品と暖かさを感じさせてくれます。
ホールの上部のトップライトから自然光がふりそそぎます。
展示室は4つあって少しづつレベル差が設けられています。螺旋上にそれぞれの展示室の中の階段(スロープもあります)で、4つの展示室を順番に上へ上と昇りながらめぐる構成になっています。 ほの暗い空間で上部も含めて5面のガラスケースの中に一つ一つ丁寧に展示されている青銅器は、驚くほど手の込んだ精巧なものばかりで、有名美術館のように混雑することもなく、じっくり落ち着いて中国青銅器の豊穣な世界観を感じとることが出来ました。これが3,000年前のもとのは驚きです。 最後の4番目の展示室から一歩外にでると、そこは建物の2階レベルで、ガラス越しの鮮やかな緑が目に飛び込んできます。「眺めのいい場所」と名付けられた、ただ外を眺めるためだけの空間です。かっては住友の美術品コレクションを見せるための迎賓館として建設されたというだけあって、この建物のドラマティックな見せ場になっています。 「眺めのいい場所」から下を見下ろすと、中庭を眺めるロビーが見えます。フリードリンクコーナーもあり美術品観賞のあと、しばしゆっくりくつろげる場所になっています。あまりに快適なのでつい長居してしまいました。1階ホールと中庭の間の縁側的な空間。軒を支える柱の意匠が特徴的です。
庭師・11代小川治兵衛の作庭による中庭の向こうには別棟の展示棟(この日は展示休館でした)があり、渡り廊下で繋がっています。 京都東山を借景としたシンプルな中庭 の中央には、井戸が設えられています。井戸は「泉屋」を屋号とした住友の象徴的存在とのことです。 建物から外に出ると道路に面した細長い空間に、前庭「泉屋博古の庭」があります。中庭と同じく11代小川治兵衛の作で、2005 年の完成。 こちらも住友の屋号「泉屋」をイメージしたせせらぎを中心に構成されています。空高くそびえる檜も、家業が銅精錬だった住友の象徴として、愛媛県別紙銅山から移設されたそうで、まさに住友の庭としてのコンセプトに裏打ちされた作庭でした。 ということで、この泉屋博古館(SEN-OKU HAKUKOKAN MUSEUM)では貴重な美術品を観賞できるだけでなく、設計者の拘りで空間構成や素材が徹底して吟味された建物を巡り、東山を借景として多くの名庭を造ってきた庭師・小川治兵衛 作の2つの庭 を散策したり、素敵な景色を望めるロビーで休憩したりしながら、ゆっくりほっこり、心安らぐ時間を過ごすことができます。 このところ大阪関西万博の人混みに慣れてしまった我が身には、ものすごく新鮮で(笑)リフレッシュできました! 東山界隈を訪ねた時には、ぜひ足を運んでみてください。 この美術館穴場です!!(今後も、これ以上混雑しないことを祈りつつ)<了>