みんなの森 ぎふメディアコスモス 探訪

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2017/11/16

 

孫の七五三のお祝いで名古屋に出向いたついでに、翌日岐阜まで足を伸ばし、伊藤豊雄さんの近作である「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を訪れました。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、1階に市民活動交流センター・多文化交流プラザ等のコミュニティー施設と展示ギャラリー、2階は市立中央図書館からなる複合施設です。

以前に紹介した「仙台メディアテ-ク」と同様、設計コンペティションで伊藤豊雄さんの事務所が設計者に選ばれました。

1階の模型コーナーでは、隣接して建設される予定の岐阜市新庁舎の模型が一緒に展示されていました。調べてみると、新庁舎の方は伊藤さんの設計ではないようで、曲線を使った柔らかい印象ではありますが、模型を見る限り、比較的オーソドックスな庁舎のように見受けられました。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は平面的にはシンプルな矩形の2階建ですが、2階部分の屋根には、多数の大きさのちがう「こぶ」のようなものが、まるで何かが湧き出たように、ぼこぼこと盛り上がっているのが分かります。

 

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1階エントランスホール。写真中央左側に2階図書館へ上がるエスカレーターが見える。

 

 

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天上からふりそそぐ光に導かれて2階へと登るエスカレーターとエレベーター

 

 

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2階図書館の木で組まれたうねる天井。華奢なサイズの鉄骨柱が荷重を支えています

 

 

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1階に展示されている2階天井木組みのモックアップ。ファブリックのような軽やかな架構です。薄い木材が層状(3層)に組まれているのがわかります。木材は岐阜県産の「東濃ヒノキ」

 

 

 

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模型で見た屋根の盛り上がりの正体は「グローブ」と呼ばれる空間。トップライトのある頂上部から、光を通すファブリックで作られた大きな傘のようなものが、いくつもぶら下がっています。「グローブ」の下はそれぞれテーマや役割を与えられていて、利用者は「グローブ」の間を自由に移動しながら、思い思いに好きな時間を過ごすことが出来ます。よく見るとファブリックの模様は「グローブ」ごとに全て異なっているのが分かります。

 

 

 

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大きなグローブに囲まれてゆっくり読書が出来る場所。

「ゆったりグローブ」と命名されていました。

 

 

図書館全体は一つの街のようなオープン空間ですが、その中に「グローブ」でゆるやかに分節された小さな空間が用意され各々に機能が与えられています。閲覧スペースとなっているグローブでは、それを取り囲むようにグローブの役割に関連した書架が放射状に配置されています。来訪者は、大きな空間の中で自分の好みの居場所が見つけやすく、グローブの傘の下に身を置くと、適度な囲われ感の中で、上部からの拡散した穏やかな光や緩やかな空気の流れ、かすかな天井材の木の香りなどを感じながら、実に気持ちのよい時間を過ごすことが出来るのです。

うねる天井と頂部が盛り上がったグローブの形状にはちゃんとした理由があって、館内の空気の循環をスムーズにする目的があるようです。グローブの頂部には換気口があり、夏はこの換気口を開いて熱い空気を外に排出し、冬場は閉じて暖かい空気を逃がさずに館内で循環させるようになっているとの事。この当たりは、自然エネルギーを出来るだけ効率的に利用し一次消費エネルギーを削減するために、高度なシュミレーションが繰りかえされたであろうと推察します。

 

「光や風などの自然そのものをデザインに取り込みたい」とは、伊藤氏の最近の著書 「「建築」で日本を変える」―集英社新書 の中での言葉です。

あるべき空間の明快なコンセプトと、それを形にするための発想の新鮮さ、そしてそれを可能にする確かな技術力が合わさって始めて可能になる空間に感銘を受けました。

 

最近の建築雑誌の記事によれば、上記の木組み天井と屋根との間の空気層に水分が溜まり、図書室内への水漏れが発生しているそうです。空気層の中のグラスウールの水分が結露したと考えられること、また複雑な屋根形状のため手作業で屋根鋼板を施工した箇所に漏水が認められたこと、などが原因とされています。現時点では、屋根上に送風機を設けて、空気層の部分に風を送り込むことで改善されてきているとの事です。

やはり前例の無い新しいことに挑戦すると、想定外の事態が起きることもあるのでしょう。雨漏りは決して許されることではないですが、この木組みのうねる天井が、これだけ快適でユニークな空間を生み出すことに成功しているのですから、運営に携わる皆さんも市民の皆さんも、あまり目くじらをたてずに、どうか寛大な眼で見守っていって欲しい…建物を造る側の人間として、勝手ながらそう思いました。

 

 

 

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