佐川美術館ーガウディ―とサグラダファミリア展ー探訪

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2023.10.30

ガウディ―とサグラダ・ファミリア展が開催されている佐川美術館、久しぶりの探訪でした。 静逸な水盤と共に佇む端正な2棟の切妻。どこをとっても完璧で一部のスキも無いと言って良いこの建物は、私のような浅学の徒はむしろ気後れするぐらいではありますが、いつ訪れても心が洗われる気がします。 ガウディ―の展示の方もたいへん興味深いものでしたが、残念ながら撮影禁止でしたので、今回は、余計な説明を抜きにして、外観と中庭を中心に美しい写真のみ紹介します。                                                                                          

<了>

               

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熊野古道なかへち美術館

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2023.08.14

    台風7号が日本のお盆を直撃する前の休日、今日しかないな!と思い立ち、南方熊楠記念館と並んで和歌山で一度は訪れて見たかった熊野古道なかへち美術館へ。 大阪から、紀の川サービスエリアで茶そばと天ぷらのランチタイムと、この時期にしては意外と軽めの道路渋滞をはさんで、のんびりドライブすること4時間あまり。   熊野本宮へと続く山間の道路沿いの一画に忽然と現れたガラスと鋼板で出来たシンプルな箱たち。高さを抑えたフラットルーフ平屋のファサードは、周囲の景観を決して損なうことはなく、ごく自然にこの歴史ある場所と折り合いを付けたかのように佇んでいました。 1998年築の25年目。一度の改修工事を経たとはいえ、外装カラー鋼板のペコつきと色褪せ、外壁と屋根の簡素な取り合い部分の錆と汚れ、内部のホールへと続く天井裏への雨漏りの痕跡等々、歳月の流れを感じさせる箇所がいくつか見受けられました。 地方の小さな公共の美術館でありながら(いやそうであるからこそ。。)当時の新進気鋭の建築家(これが最初に手掛けた美術館。今や世界的に活躍されています)を起用して生まれた優れた建築ですが、一方でこの種の建築の維持管理の難しさを感じさせられました。   建築というものは、その場所との折り合いをつけると同時に、その先に続く永い歳月との折り合いをいかにつけていくか。。という事も大切です。 関西の大先輩建築家、出江寛氏の「古美る」という言葉が思い起こされます。       受付のあるロビーからエントランス方向を望む。わずかに彎曲する壁面が来訪者を展示室へと誘います。 ここで少し気になったことが2つ。一つはガラス面に半分だけ降ろされたロールスクリーン。この時間は直射日光の差し込みもないので、出来る限りガラス面は開放してすっきりさせたいところ・・ もう一つは、このガラス面に固定された展示のためのホワイトボード。このボードに貼り付けられた展示ポスターのサイズが、正方形のホワイトボードと合っておらず、だらしなく紙が下にはみ出してしまっている・・ 細かいことばかりですが、こういった部分にしっかりと神経が行き届いていれば、その建築を大事に思う発注者の気持ちが伝わってきて、設計に携わるものとしては(自分の設計したものでなくても)ほっこり嬉しい気持ちになるのですが。。やや残念。 というか、こんなことが気になってしまい、純粋に肝心の展示を楽しめないのは設計を生業とする者の性か・・むしろそっちの方が残念なのかも。     上の写真は、この美術館で設計者の展示会が開催された時のパンフレット。よくよく見ないと読めない せじまかずよ という細長いたてがきのサインがかわいい。      

ガラスのコーナーに設置されたアート作品。外の景色が借景となっています

          このロビー(交流スペースと名付けられています)はいかにも妹島さんらしい空間。ツヤのある壁面のパネルが外の景色をほのかに映し出しています。地域の皆さんも含めた交流の場としても考えられているそうです。     真っ白な空間に白いテーブルと原色のチェアー。オレンジの入ったTシャツが映えそうだったので思わず自撮り(蛇足でした)      

壁面に穿たれた空調の吹き出し口

     

ロビー(交流スペース)から見えるのどかな川沿いの景観

       

屋外に置かれたアート作品

      ロビー(交流スペース)の外観。5枚ある天井までのパネルは扉になっていて外部に開く仕掛け。ちょっと大層な印象ですが、川沿いの屋外スペースから自由に出入りできるような配慮か。。排煙口(火災時の煙の排出口)を兼ねているのかも知れません。 、    

左側の突出したグレーの箱が展示品の搬入口とストックヤードになっています

     

中央の曲面の壁の中は機械室。右側に突き出している箱の中はトイレ

        建築の基本的な構成としては、中央に矩形の展示室を設け、ガラス貼の回廊がその周りに設けられていて、来訪者は外部の景色を眺めながら自由に巡れるようになっています。その回廊につながる一番眺めの良い川沿いの一画が上で紹介した交流スペースというわけです。 ガラスの回廊は、それ自体が展示ギャラリーのようにも使える一方で、貴重な作品のある展示室と外部空間とのバッファゾーンとしての役割もありそうです。 そして展示や回廊以外に美術館として必要な機能である、事務室・トイレ・機械室・作品の搬入口とストックヤードは、各々が独立した棟で出来ています。 それらの棟は、回廊のガラスと対比させたカラー鋼板貼で、一つ一つが突出した形状で本体の回廊に取り付いています。 俯瞰的にプランを見るのとは異なり、予備知識なく訪れた来訪者は、建物の外周をぐるりと回ってみて初めて全体構成が分かるわけですが、エントランス横の事務室の棟は、アプローチ側からの視線に対して広角で設けられていて、来訪者の視線を受け止めるような構成になっています(上の写真)。   歴史ある熊野古道の山間にアートを通した地域交流の拠点としてつくられたこの美術館。設計者の個性を表した斬新な建築ではあるけれど、簡素なディテールを用いながらボリュームを押さえて各部を分節し、周囲の自然の中に埋め込まれたその佇まいに気取りや威圧感などは無く、誰もが普段着でぶらりと立ち寄ることが出来そうな施設となっていました。   若かりし設計者の想いの入ったこの建物がこれからも大切に使われ続け、地域の人々や熊野古道を訪れる人々にもっともっと親しまれればいいな、と思いながら帰路につきました。  

<了>

   

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国立京都国際会館 Open Day

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2023.06.14

  大谷幸夫氏設計のモダニズム建築である国立京都国際会館。会議などのイベントの無い時に、ロビーやカフェ、レストラン等が一般公開されています。この日は運よく休日の土曜日だったこともあり、ゆっくりと見学することが出来ました。上の写真はメインエントランス側の外観。この建築が只者ではない雰囲気を漂わせながら来訪者を迎えてくれます。       メインエントランスからロビーへ向かう両側にくの字型の壁面を持った長い通路。台形と逆台形をモチーフに造形されているこの建物を象徴するかのように、重ね合わせた両手でやさしく来訪者を包み込むような空間です。トップサイドライトからの柔らかい光が、小叩き仕上げの上部コンクリート壁面を際立たせています。           全体の面積の7割を占めるというロビー空間。国際会議場として、様々なシチュエーションでロビー活動の舞台となることが想定されています      

日本庭園に面したテラス席もあるカフェテリア

     

V字型柱のディテイル。アート作品と一体になっています

   

   

   

 

日本庭園側から見た外観

   

   

 

剣持勇氏デザインの六角形チェアのあるロビーからカフェテリア方向を望む

   

   

   

   

   

 

村野藤吾設計の宝ヶ池プリンスホテルに隣接しています

   

 

ニューホールは、モダンでシンプルな 佇まいです

 

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六甲枝垂れ

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2023.05.27

  六甲山の展望台にある六甲枝垂れ。建築後13年が経ってこの地にしっかり根付き、現在は「シダレミュージアム」として若手アーティストの作品とのコラボレーションが楽しめます。        

展望台へのアプローチ

          六甲山の自然を体現したと言えるこの建物は、冬場には雨水をためて氷を作って建物下部の氷室にストック。夏場は冷気を氷室から建物内部の「風室」に取り入れて上部から排出することで、自然な換気による涼風が体験できます。              

アーティスト達の紹介パンフとその作品たち

     

建物内の「風穴」から望む山の新緑

        段々畑のようなひな壇に冬場は雨水を溜め、氷をつくる。氷室にストックされた氷は夏場訪れる人に、自然エネルギーを利用した涼を提供する。。過去に六甲の水が神戸で販売されていたことから着想されたという、この場所で建築を通して自然を循環させるアイデア。      

神戸と大阪の街への眺望。(夜は百万ドルの夜景に)

     

見晴らしの塔やテラス、カフェ等があるイングリッシュ・コッテージガーデンを望む

      展望塔を覆うフレームには吉野ヒノキのチップが装着されていて、冬場の条件が整ったときには樹氷が見られます。      

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白浜・南方熊楠記念館 探訪

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2023.04.11

南紀白浜にある南方熊楠記念館。とある秋の休日、思い立って奈良市内の自宅から車を飛ばして昼過ぎに到着。 番所山公園のある白浜半島の高台に位置する2017年築の新館は、うっそうとした緑に覆われた石段を昇った先に、周辺の樹木と対話するかのようにたたずんでいました。       8か所のコンクリート打ち放しの半アーチとスレンダーな丸柱で支えられた1階ホールは、周囲の緑をが内部空間に浸潤する開放的な空間。2階の展示室エリアは一転して、柔らかく彎曲する白い壁で覆われた閉鎖的な空間となっています。奥には耐震改修を終えた本館があり、2階の展望ブリッジでこの新館と接続されています。     限られた敷地の中で、本館の耐震改修工事のための進入路にもなるピロティ―空間を確保しながら、周りの樹木や地形に沿い、この場の自然環境を損なうことの無いように配慮されたやさしい佇まいです。    

本館への1階の動線となるピロティ―。天井に周囲の景色が映りこんでいます

 

  ピロティ―の奥にある本館との接続部分。2階レベルで本館に繋がるブリッジ。半アーチと丸柱で支えられています。本館の前には既存を残したと思われる植栽が新旧の建物に寄り添うように立っています。  

  本館2階に展示されていた模型。右奥の60年代の典型的なモダニズム建築である本館は登録有形文化財に指定されています。この本館に対比して曲線主体の有機的な造形の新館は、周辺のコンテクストに馴染んで、この地にふさわしい新たな風景を生み出しているのがよくわかります。  

  上の写真は同じく本館2階、この建物の設計責任者で2016年に逝去された小嶋一浩氏の作品年表と、ガラスケースの中には複数の建築賞の賞状や受賞記念のトロフィー、及び設計主旨などをまとめたプレゼン資料が展示されています。完成した建物が設計者の優れた業績としてきちんと評価がなされ、こういったかたちで特別に展示コーナーが設けられていたことは、私達同業者としては、少しうらやましいけれど。。たいへん嬉しいことでもあり、大いに励みになりました。  

  1階ロビーの様子。休日なのにほとんど来訪者がいないのは寂しい。周囲の自然を室内に浸潤させることを意図した設計者の思惑とは裏腹に開口部の前にもパネルなどが並べられ、その他のグッズや什器等も比較的無造作に配置されていて、設計者によって注意深く造りこまれたこの空間が、やや雑然とした印象になっていたのは少し残念でした。     上の写真は1階ロビーにある案内板。新館と本館の関係、屋上からの光を取り込む大きなランタンや、館内で流れている2種類の音楽について説明されています。  

  内部空間の見せ場でもあるこの大きなランタンは、テキスタイルデザイナーの作品。屋上からの光の筒の中を、円筒状に蔦がからまって降りてきているかのようなイメージです。ランタンは細く割いたテープ状の細い生地(布)を編んでつくられており、よく見ると、何と一枚一枚の布には熊楠が書いた文字やイラストなどが転写されています。1階は周囲の緑が身近にある分やや光が入りにくいことから、屋上に設けたトップサイドライトから2階の展示室を円筒状にくりぬいて光を取り入れようという建築家の意図と、その円筒の中に南方の膨大な手作業の痕跡を一枚一枚に取り込んだ布で丁寧につくりこまれたランタンを吊るす。。というデザイナーの着想が合わさって、この南方熊楠記念館ならではの印象的な場となっています。しばし傍にたたずんで、この不思議なランタンの中を降りてくる柔らかな光を眺めていると、モノづくりの楽しさが伝わってきます。       1階ロビーから2階への階段。高さを抑えた窓から緑が垣間見え、抑え込んだ光が木の床を印象的に照らし、上部のスリットからの効果的な間接照明によって柔らかい曲面の壁が際立つ。上手いです!     2階の本館への通路でもある展望ブリッジ。横長の窓からは海を見晴らす広大な景色が望まれ、窓際のデスクでは関連資料が閲覧できます。右側の壁面には南方が出資者にあてた自筆の履歴書がはめ込まれています。これが圧巻でした。     彫りこまれた壁面の下段が、南方自筆の何と長さ8m近くにも及ぶ履歴書。受け取った方は、さぞぶったまげたことでしょう(笑)。この辺りが南方の真骨頂でしょうか、、物事に対する尋常ならざる集中力と徹底ぶりがうかがえます。     上の写真、下段が南方自筆のコピーですが、南方のような集中力に欠ける私には、ほぼ判読不可能でした(笑)。上段はその翻訳?としての説明書き。いやはや、これはこれで労作です。     2階の常設展示室側からみた展望ブリッジの様子です。常設展示室は残念ながら撮影不可でしたが、1階ロビーや展望ブリッジとは対照的に閉鎖的な空間で、丁寧な展示を見て多彩な南方ワールドが堪能できました。尚、1階ロビーの案内板にも書かれていましたが、館内を流れるパーカッション奏者による音楽は2種類あって、この常設展示室入口のガラス扉を境に分かれています(上の右側の写真)。この展示室の入口(陰と陽の境でもあります)に立つと、2つの音楽が交じり合ってもう一つの音楽が聴こえるという趣向です。美術館などでよくある作品解説をヘッドフォンで聞くのもいいですが、館内を流れる静かな音楽に心をゆだねながら、自分のペースで思い思いに展示や建築を楽しむのが、この記念館には合っているように思いました。そういう意味では来訪者が少ないのも良いことかも知れませんね。     上の写真左は展望ブリッジからの眺めです。写真右は本館側から見た展望ブリッジ。もしこの壁面のカーブが無かったら、もう少し単調で固い廊下になっていたように思います。      

さて、もう一つに楽しみは新館屋上からの雄大な景色です。

   

円月島がすぐ傍に見えます

    南方にちなんだと思われるキノコ型の庇と、これも何かのメタファーかな?と思わせるベンチが楽しい。    

本館の円筒状の階段室が見えます

   

一番高いところにある展望台からの眺め。かなりの強風でした。

    これが下階に光を届けるトップサイドライト。ランタンの上部は白い生地(布)でできています。天井にはランタンの周囲に照明が埋め込まれているので、おそらく夜間は灯台のように明かりが灯るのだと思います。上部に突き出たガーゴイルと床の雨落しは、1960年代のモダニズム建築である本館の円筒状階段室のデザインが踏襲されているようです。       私は南方熊楠については、恥ずかしながらほとんど予備知識もなくこの建物を訪れました。様々な展示を通して、始めて南方が残した業績の一端に触れることができましたが、そのフィールドの広さと深さにただただ驚嘆するばかりで、まだまだこの異能の才人を充分に理解できたとは思えません。今後も多くの研究者によってさらに検証されていくことでしょう。   ただこの南方熊楠記念館はそういった予備知識のあるなしに関わらず、周囲の自然環境に沿った良質な建築空間を体験しながら、訪れる人それぞれがゆっくりと南方ワールドを楽しめる施設となっています。   上の写真は南方マンダラの説明ですが、「森羅万象の相関関係」を示した絵図です。「この世界は因果関係が交錯し、さらにそれがお互いに連鎖して世界の現象となって現れている」。この絵図をプリントしたTシャツも販売されていました。このマンダラから着想を得て、この絵図を描いた展示室の入口のガラス扉が開いた瞬間に2つの音楽が交じりあって新たな3曲目が生まれる。。という音楽家独自のアイデアが生まれました。様々なジャンルにおいて南方が残した独自の世界観に基づく綿密な研究や社会活動の記録は、テキスタイルデザイナーが光の筒の中のランタンを創作したように、それを受けとる側各々の感性を刺激して新たな発想やアイデアを生み出すきっかけとなり、あるいは南方が自然保護の活動で示したように己の信念に基づいて行動する勇気を与えてくれるのかも知れません。   (2021年10月10日 田中啓文)

<了>

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大阪中之島美術館探訪

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2023.01.07

  m2022年の年末から2023年の年始まで、興味深い2つの展覧会が同時開催されている大阪中之島美術館を初めて訪れました。     これまでは、仕事の途中に近くを通りがかった時、黒く大きなボックスを見上げながら、仕事仲間と「結構色むらあるな~」、「縦目地のパネル割が大きなALC版みたいに見えへんか~」、「隣の国立国際美術館のステンレスフレームのオブジェが映えるように、黒い箱にしたんとちがうか~」等々、創った人の苦労もかえりみず、好き勝手なことを言って楽しんでいました。   今回初めて館内に入って、久々に大阪に良い建築が出来たな~と感心しました。 (公開コンペで選ばれた設計者が大阪人でないのは、やや残念ではありますが・・) 1~5階までパッサージュが立体的に繋がる内部空間は秀逸です。    

4階パッサージュからの見下ろし

          交差する2本のエスカレーターはメインフロアの2階から展示空間のある4階まで架け渡されており、各々昇り(行き)と下り(帰り)の一筆書きの動線となっています。 来訪者は、展示のある4階を見上げてワクワクしながら、エスカレーターで昇っていきます。    

4階の展示空間の途中にある休憩ロビーがアイストップになっています

    パッサージュ4階天井の一部をくりぬき、5階を貫くトップライトから凝縮した自然光がふりそそぎます。天井に架け渡されているチューブ作品は、今回の「GUTAI-分化と統合」の特別展示。   4階と5階はそれぞれ別の展示スペースで、エスカレーター(昇りのみ)、エレベーター、階段の3種類の動線が用意されています。  

4~5階をつなぐ階段。踊り場には人のオブジェ

   

4~5階のパッサージュの様子。左側にガラス貼りのエレベーター

   

黒いボックスをくり抜くガラス窓から見る中之島の都市景観。建物の一つ一つはしっかり造られているが、全体の景観としてはやや雑多な印象         5階のパッサージュはシンプルな長方形平面で、両端にガラス窓。光天井のデイテールがやや無骨な気がしましたが、言うは易し、行うは難し。   展示鑑賞後の来訪者は、展示の余韻を楽しみながら、下りのエスカレーターから眼下に広がる立体的なパッサージュを人が行きかう景色を眺め、ゆっくりと降りていくというシチュエーション。ここがこの美術館一番の見せ場。さながら建物の中に小さな都市が内包されているようで、訪れる人にとって最も印象的な場面です(下の写真)。   下りエスカレーターからの眺め。視線は否が応でも下を向きます。右側に2階チケット売り場、左側に1階への階段。交差する昇りのエスカレーターが右端に見えます。下階1~2階の吹き抜けも、眼下にまたぎながら2階に到着。    

隣接する国立国際美術館エントランスゲートのステンレスパイプと、大阪市立科学館

      メインフロアー2階は、誰でも自由にくつろげる広々とした空間。設計上は、展示室だけではなく各階のパッサージュでも、展示や催し等に対応できるようになっているそうです。 今後はこの豊かなパッサージュ空間がより有効に利用されることを期待したいです。 今回は、展示のある4階以上の階に行くためには、この2階にあるチケットコーナーで鑑賞券を購入しないといけなかったのですが、おしむらくは(管理上の工夫が必要であるとはいえ)、1階から5階までのパッサージュを来訪者が自由に行き来できるようになれば、より都市に開いた公共性のある美術館になることでしょう。    

ショップエリアと、ホールのある1階のパッサージュ。車寄せのある駐車場にもつながります

   

ショップエリアのインテリアショップとレストランは、街路からも直接アクセスできます

   

ヤノべケンジ作・巨大な猫の彫刻と、照明のオブジェがある芝生広場。

      芝生広場から見る黒いボックスが浮遊しているように見えるファーサード。2階は建物外周の三方が全面ガラス貼りとなっていて、ショップのある1階と合わせて、敷地周辺との連続性が意図されています。   シンボリックなステンレスパイプのエントランスゲートから入場する隣接の国立国際美術館は、直下の地下1階がショップやレストランのあるパブリックゾーンとなっており、「都市に開かれた美術館(新建築誌2004年5月号)」として、2004年に開館しています。しかしながら、建物の殆どが地下にあるせいもあり、展示を見るために訪れる人々以外の誰もが気軽に立ち寄りたくなる美術館にはなっていないように思います。 それから18年を経て、ようやく開館したこの大阪中之島美術館。前述のように、1階・2階の都市との連続性が、内部の吹き抜けと立体的パッサージュによって、展示室のある4階・5階までつながり、より開かれた美術館であることは間違いありません。 国立国際美術館とも歩行者デッキで結ばれる予定とのことなので、国と市の2つの美術館が互いに連携しあい、大阪を代表する中之島の地で市民や観光客が気軽に集える文化的スポットとして、ますます発展して行って欲しいものです。  

(了)

         

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アマン京都

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2022.08.31

  建築家ケニーヒルの遺作、アマン京都を少しだけ見学する機会がありました。鷹峯の森の中に悠然と点在する寡黙な建築群。        

正門の前でセキュリティーガードの監視(笑)を受けながらのワンショット

」    

右手に見えるのがアライバルパビリオン。宿泊者はまずここでチェックイン

     

後ろのリビングパビリオンの中身はレストラン

         

庭に面したレストランの内観

     

レストラン前のテラスにある苔むした石が圧巻

         

ケニーヒルガーデンと命名された庭は見事に整備されていました

        敷地の中を散策できるのは、宿泊者限定。時間と費用が許されるならば。。いつかはゆっくり何泊か滞在してみたいと思える希少なホテルでした。

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ROKU 京都

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2022.08.22

  お盆休みの2軒目はROKU京都。こちらも昨年開業したヒルトン系列のホテルで、鷹峯の自然豊かな場所にゆったりと建っています。       水盤やガーデンをはさんで、宿泊棟、ダイニング棟、レセプションとティーラウンジ棟、プールやジムのあるスパ棟が各々独立して配置されています。レセプション棟でチェックインすると、中庭を望む外部回廊を経て、水盤に挟まれたダイニング棟と宿泊棟をつなぐブリッジを通り、宿泊棟に至ります。    

レセプション棟の水盤が宿泊客を迎えます

     

軒下空間でもある回廊の前に広がる庭園。庭園の向こうに宿泊棟が見えます

     

回廊を通り、ダイニングとブリッジの方へ伸びやかな景観を眺めながらのアプローチ

      水盤越しにブリッジを望む。右側の建物がダイニング棟。正面左にレセプション棟につながるティーラウンジ棟が見えます。どちらも木造建築。ホテルというよりは美術館のような風情のある建築群です。       宿泊棟側からブリッジにつながるダイニング棟を望む。スレンダーな鉄骨柱と木目の天井の取り合わせが端正な美しさです。      

宿泊棟の廊下

       

  部屋は約50㎡の広さで、庭に面した石張りのインナーテラスがあり、テラスの一画に温泉を引き込んだバスが配置されています。    

 

寝室の横には引き戸で隔てられた2箇所の洗面所とシャワールームがあります

   

 

テラスと寝室の間の木戸を閉めるとこんな感じ。木戸は繊細にデザインされています

   

  洗面とシャワールームのあるエリアから、バスのあるテラス側を望む。洗面とシャワー室との間に仕切りはなく、バスを通して庭園まで望める開放的なつくりですが、シャワーを使うと洗面所の床が水浸しになるのは、やや残念。          

木の架構がきれいなティーラウンジ棟で一休み

     

上の写真右側に見えるのは既存のチャペル

      静けさを感じさせる水盤と、ブリッチの水平線に対比させて縦の線を強調した独特な樹形の台杉、各々が独自のフォルムの建物群などを眺めながら、しばし散策です。           地下1階のレベルには温泉を引きこんだサーマルプールがあります。プールサイドに面した宿泊室が4室用意されており、部屋のプライベートテラスから直接プールサイドに出ることが出来ます。               サーマルプールの利用は、上記プールサイドの特別な部屋は別として、一時間ごとの予約制になっていたので、薄暮の頃合いを狙って夕食後の19時に予約。この時間帯は子供さんの利用は禁止になっているらしく、人影も少ない静かなプールで気兼ねなく遊泳。水温は32度ありましたが、この季節、もう少し温度が低ければ、より気持ちよかったかも。。           さて一夜明けての朝食はいよいよダイニング棟でのバイキング。天神川沿いのテラスに面した席で、水面にかぶさる枝垂れもみじを愛でながらの美味しい時間。 チェックアウトは12時までなので、朝食のあとは部屋に戻ってゆったりと。   日頃の慌ただしい生活からしばし開放され、とびきり贅沢なひとときを過ごしました。        

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KYOTOGRAPHIE 第10回京都国際写真祭 探訪 

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2022.05.10

  日曜日のお気に入りTV番組「日曜美術館」で紹介されていた京都グラフィー。今回は記念すべき第10回目とのことで、GWの好天の一日、久々の京都で会場めぐりを楽しみました。 まずは八竹庵(旧川崎家住宅)の総合案内所に向かいます。会場となっているのは、武田五一も設計に関与し大正期の数寄屋大工が手掛けたという、庭に開いた和風住宅にライト風の洋館を組み合わせた都市型住宅です。京都市指定有形文化財に登録されており、普段は公開されていないという貴重な建築とコラボする作品展示を楽しみながら、写真祭の概要をチェックです。  

   

参加アーティストにまつわる書籍が並べられています

       

伸びやかに庭に開いた開放的な座敷。とりわけ今の新緑の季節は最高です

   

縁側を利用した作品の展示

   

座敷の畳の上や土壁に、さりげなく自然に、作品が展示されています

      さて、次はイサベル・ムニョス×田中泯×山口源兵衛がコラボする、誉田屋源兵衛 黒蔵、奥座敷の展示へ。こちらも堂々とした京の町屋建築で、玄関を入っていくときからわくわくします。    

こちらも風情のある中庭です

       

田中泯が奄美大島の海中で舞う様をイサベル・ムニョスが撮影しています

   

      上の写真は、2層吹き抜けの円形ギャラリー。元々は大きな緞帳等製作のための大型織機が置かれていた蔵だったそうです。天井のクロス梁を丸柱が支える構造は、ル・コルビジェ設計の上野にある国立西洋美術館のエントランスホールを連想させます。案内係の方のお話を聞きながら順番待ちの後、正面の開いた扉の向こうにある赤い螺旋階段を上って、3階の展示空間に向かいます。    

  螺旋階段を上がり、トップライトからの光が降り注ぐ円形の空間には、3本の帯が展示されています。この帯の一部(写真のプリントのように見える部分)は、イサベル・ムニョスが撮影した写真を和紙にプラチナプリントし、西陣の職人がその和紙の裏にプラチナ箔を張り付けた後、細かく裁断して糸にし、それをまさに一糸乱れぬコンマミリ単位の精度で織り上げて写真を再生する、という手順で創られているそうです。ムニョスの写真が、京都の伝統的手法によって帯の中で再構築されることで、その写真作品が表現する世界がより際立つ・・。山口源兵衛氏のユニークな着想による斬新なコラボレーションの試みです。         見学を終えた皆さんが居なくなった頃に「さあ今のうちですよ!」と仰る案内係の方のお言葉に甘えて、写真撮影をお願いしました。帯は丁度私の背丈ほどのサイズで、このコラボに飛び入りで参加させてもらった気分。    

泥をかぶった後ろ姿は山口源兵衛氏

   

円形のギャラリーのある蔵の外観の見上げです。蔦のからまる「黒蔵」

      こちらは円形の蔵とは対照的な京町屋の土間空間。濃密な展示に熱中した後の心が、しばし癒されたところで、いざ次の展示へ!    

京都文化博物館 別館のエントランス

  三条通りを東に進み、烏丸通を渡って、京都文化博物館 別館のギイ・ブルダンの展示へと向かいました。     上の写真は2階のギャラリーからのワンショットです。らせん状に立ち並んだ壁に、ファッション写真家であるギイ・ブルダンの写真作品が整然と展示されています。    

重厚な様式美と、モダンでカラフルな展示壁の対比

          展示壁には随所にスリットや開口部が設けられていて、よくよく見ると、手前にある作品とスリットの向こう側の作品とが、関連づけられているのが分かります。           ギイ・ブルダンは緻密に構成された作風で知られていますが、まさにその作品とコラボするかのように、よく計算された展示空間の中、色々なシークエンスで彼の作品を楽しむことが出来ます。     様式建築としての場の力、秀逸な展示構成、ギイ・ブルダンの多様な作品が醸し出す明るい知性、等々に直に触れることが出来て、ここでも心地よい時間を過ごすことが出来ました。   これまで外れのない京都グラフィーの展示! 舞台は町屋建築から様式建築まで・・その時代や場を超えて、素敵な展示空間に仕立て上げてしまう自由な感性と懐の深さに、感心することしきりです。       前川国男設計、香山嘉夫改修設計の京都会館(ロームシアター京都)の広場に面して建つ京都市美術館 別館では、ファッション、ポートレート、静物、風景等々多岐に渡って、幅広く質の高い作風で知られる、アーヴィング・ベンの展示です。   京都会館は、現在は蔦屋書店やレストランが入って賑わっていますが、前川国男の代表作の一つにしてモダニズム建築の大傑作、オリジナルを尊重した香山嘉夫の改修設計も見事で、いつ見ても素晴らしいの一言です。上の写真のように、本展の会場である京都市美術館 別館の意匠と並ぶと、やや違和感を感じてしまうのは否めませんが、これもまた京都なのでしょう。       展示空間は、昨年竣工・本年開館した大阪市中之島美術館の設計を手掛けた遠藤克彦氏のデザインで、60度の角度を持った三角形の壁パネルの連続で構成されています。 鋭角な壁で囲まれた場所では、より被写体の持つ特徴が際立つ事、及び照明だけに頼らず自然光を取り入れて撮影するためには露光時間を長くする必要があり、両側を鋭角な壁に囲まれた場では被写体の動きも少なくてすむ、という考えにより、アーヴィング・ベンが撮影の場として好んだシチュエーションだそうで、遠藤克彦氏は展示構成にあたり、そのことに着想を得たそうです。 会場の一画にはグレーの鋭角な壁に囲まれた場が用意されていて、来訪者が自由にポートレートを撮影できるようになっていました。実は私もこの場所で撮影してもらいましたが、まさに被写体の特徴が際立った結果か・・あまり出来栄えがよろしくなかったので、ここでは割愛しています(笑)。                

グレー基調の鋭角な壁で構成された会場風景

   

建築家ル・コルビジェの肖像写真がありました。脚が長く見えて格好いいポーズです!

        この日最後に訪れたのは、嶋臺ギャラリーのマイムーナ・ゲレージの展示です。夕刻になってもこれだけの来訪者の列。日中はもっと多くて一時間近い待ちだったそうです。    

かって造り酒屋でもあったらしい会場の玄関を入ると、大きな井戸が鎮座

    イタリア系セネガル人アーティストであるマイムーナ・ゲレージの独特の世界観を言葉で語るのは私には荷が重いですが、写真表現の枠を超えて、見るものをくぎ付けにするパワーを持った作品群でした。          

ライティングがハートマークになっています。これも演出か?

       

個室では動画も上映。床に座ってゆっくりとゲレージの世界観を堪能

    京都グラフィー、今年初めて訪れましたが、やはり一日で回りきるのは厳しいようです。来年は、しっかり時間を確保して、ぜひまた訪れてみたいと思わせる催しでした。 コンセプト、会場の選定、展示内容と構成、参加アーティスト等々、どれをとっても想像以上にすばらしいもので、今後も京都を起点として、さらにグローバルに発信していける可能性を大いに感じました。関係者の皆さん全員に素直に敬意を表したいと思います。素敵な催しをありがとうございました!  

<了>

     

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コシノヒロコ展ー兵庫県立美術館

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2021.06.01

  久しぶりの兵庫県立美術館。折しもコロナ第4波を受けての緊急事態宣言期間中ではありましたが、感染対策を講じた上で2021年4月8日~6月20日まで開催されている「コシノヒロコ展―EX・VISION TO THE FUTURE 未来へ」を訪れました。 普段は、さほどファッションとは縁のないわが身ですが、予想をはるかに超えた素晴らしい展覧会に感動。ファッションだけにとどまらない多彩なアーティストとして、84歳にして尚精力的に活動されているコシノヒロコさん。おそらくはたくさんの優秀なスタッフの情熱的なフォローを得ていることでしょう。各部屋毎の構成に工夫を凝らし、ビジュアルな魅力満載の展示空間で、そのエネルギッシュな活動の成果が披露されています。力の入った展示に魅せられて、各部屋を何度か行ったり来たりするうち、思わず時の経つのを忘れてしまうほどでした。 コロナ禍の中で決して来訪者も多くなかったのは残念ですが、全館写真撮影OKでしたので、順次その魅力の一端を紹介してみたいと思います。                   巨大なコシノヒロコ型風船人形がお出迎えのエントランス階段を上り、展覧会の入口へと向かう大階段では、コシノヒロコファッションの代表作を身にまとったマネキンたちがせいぞろい。無機的なコンクリート打放し空間の中、華やかで手の込んだコスチューム達が存在感を放ちます。内2体のマネキンは実はロボットで、来訪者を愛嬌たっぷりに迎えてくれます。         展示の始まりはコシノヒロコの年表。これまでの84年の人生を振り返る部屋。その多彩な活動を物語る様々なエピソードが、コシノヒロコ自身が語るビデオや写真、モノ達で楽しく表現されています。                             「絵画とファッション」と題した部屋では、色彩豊かな絵画作品の数々が同じく明るいファッションとコラボ。最初にこの部屋に入った瞬間、抽象・具象・大小を問わないコシノヒロコ絵画作品の多彩さとクオリティーの高さにとにかく驚きました。個性的なファッションを生み出す彼女の創造力の源泉を見た思い。実はこの部屋で写真撮影OKと聞き、慌ててロッカーまでカメラを取りに戻ったのでした。                               続く部屋は「墨絵とファッション」。コシノヒロコが本格的にアート活動に取り組むきっかけとなったのが墨絵とのことです。筆やモップまで使って自由な筆致を楽しみながら創る独自の作品世界は、屏風絵や着物の絵付けまで広がります。絵画とコラボするファッションも白と黒のモノトーンの作品が選ばれています。その中で一転、中央の黒い壁面に飾られている、おそらく絵具を流して製作したと思われる巨大な朱色の作品が鮮烈です。         ファッションの足元を彩るタイツばかりを集めた「驚きとファッション」の小部屋。壁面から突き出たいずれ劣らぬ個性派ぞろいの足先群のパワーに、思わず仰け反りました(笑)。 少し落ち着いたところでワンショット!         この見覚えのあるユニフォームは体操競技日本代表のもの。これもコシノヒロコのデザインとは知らなかった! 躍動的な3体のマネキン周囲の壁面を飾るのは、紅白と黒の三色で構成された、歌舞伎の隅取りや市松模様等、日本伝統の図柄のコラージュ。         多彩な展示の中でも一際異彩を放つ、コシノヒロコが異分野のアーティストと手を組んで創造したアート作品。プロジェクションマッピングによって暗闇の中で光の演出がなされ、幻想的に折り紙のモチーフの紙ドレスが浮かび上がります。思わず見入ってしまい、ビデオに撮れていなかったのが残念。                 「錯視とファッション」の部屋。ファッションのモチーフと同じ柄で床と三方の壁面が構成されています。2次元と3次元で反復を繰り返す文様を眺めているとなんとも不思議な感覚に陥ります。         「エトリケンジ」製作のワイヤーネット製の不思議なフィギアと、それと呼応するファンタジーなファッションや絵画が独特の世界感を表現しています。とにかくそれぞれの展示空間の多彩さと創造性に感服させられます。                     こちらは映像体験の空間。2020年のステイホームの期間中にコシノヒロコの手で生み出されたという不思議なキャラクター達が登場するアニメーション。じっくり見入っていると、しばし現実の世界を忘れさせてくれるシュールな時間と空間が体験できます。コシノヒロコ独特の精神世界の奥深さが際立つような展示空間です。             上の写真はコシノヒロコがデザインした実際の洋服をアクリルケースに詰め込んで、絵画のように見せた展示。まさにこの展覧会のテーマに沿った「絵画とファッションのクロスオーバー」の分かりやすい一つのかたち。                 マネキンが身に纏う個性的なファッションは、コシノヒロコの絵画をテキスタイルに落とし込んでデザインされた作品とのことです。そしてその背後には同じモチーフで作成された大型のタペストリー。絵柄の斬新さと華やいだ色使いが素晴らしく、いつまでも眺めていたくなる空間でした。この展覧会を担当した多くのアーティスト達の情熱が伝わってきます! 以後は個々のファッションを紹介します。一つ一つが独創的で手の込んだ素晴らしいもの。こんなファッションを悠々と着こなす生身の女性に会ってみたくなりました。                     さて展示もいよいよ最終章。コシノヒロコファッションの集大成の部屋。これまでの作品106体が一同に会します。圧巻です!     マネキンのコンダクターが奏でるドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」が会場を静かに包み込んでいました。                               以下、展覧会図録より抜粋。 「HIROKO KOSHINOの数十年の歴史とコシノの思想的変遷、制作に携わる作り手たちの情熱、高揚感、手仕事の美しさ、そして時代の空気感。ここは感性が凝縮した空間」  

アートがすき

デザインがすき

ワクワク

にほんをしりたい

せかいをしりたい

ドキドキ

みんなのことば

わたしのことば

ワクワク

みらいのおとなに

みらいのこどもに

ドキドキ

      最後は、幼稚園に通う子供たちが描いた似顔絵にコシノヒロコが手を加えたタペストリーがお見送り。次世代の子供たちに託すコシノヒロコの思い、TO  THE  FUTURE   未来へ。      

<了>

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