STAP細胞問題とは?(小保方晴子 vs 須田桃子)

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2016.02.29

小保方晴子さんの手記「あの日」が出版されたので、あのSTAP細胞問題とは一体何だったのかが知りたい一心で読んでみました。   小保方さん側から見たSTAP細胞問題を、赤裸々に綴ったセンセーショナルな内容で、要旨を一言で言うならば、「私に反省する点が多々あるとは言え、基本的に私は、理研関係者の一部やマスコミによって、魔女狩りのごとく捏造犯に仕立て上げられた哀れな被害者である」という主張のようです。記述には、感傷的表現(悲劇のヒロイン的な)も多く見受けられるので、これを読んで小保方さんに感情移入して涙する人もいるでしょう。また一方で「いまさら、とても信用する気にはならない」という批判も多くあると思います。   正直言うと、これまでの経緯を見ても、未だ小保方さんにシンパシーを感じていた私ではありますが、やはりここは本人の一方的な主張だけを聞いていてもいかん!と思い、「あの日」の中で小保方さんが、その取材姿勢等について痛烈に批判している毎日新聞記者、須田桃子さんの「捏造の科学者」という著書も合わせて読了しました。 こちらは、関係者への綿密な取材をもとに、STAP問題の全貌を解明しようとした中々の労作でした。奇しくも小保方さんも須田記者も、私と同じ大学、同じ学部出身なので、大変興味深かったのですが、さて両著書を読んでみた結論は・・・ますます私の頭は混濁し、より一層分からなくなってしまいました。   ・「STAP細胞」とはES細胞の混入した結果というが果たして本当に事実なのか?   ・小保方さんの言う「酸で刺激すると初期化する未知の細胞」は、まったくのでっち上げだったのか?   ・そして仮にでっち上げが事実だとしても・・・   ・いったい、誰が、何時、何故、そこまでして「STAP細胞」をでっち上げなければならなかったのか(いずれはバレルのが明白なのに!)   ・何故、居並ぶ共同執筆者の著名な先生方の誰もが、そのような分かりきったでっち上げに、論文発表まで気づかなかったのか?   私としては、須田記者だけではなく、「あの日」の中で、小保方さんから捏造の張本人であるかのように名指しされている共同研究者の若山教授、そして本問題の主体である理研の反論をぜひ聞いてみたいというのが正直なところですが、果たしてそれが為されるのかどうか・・・   それらの真相を知りたくとも(当事者によって意図的に?)真相は、闇に閉ざされてしまい、いつのまにか「うやむや」で終わってしまうのではないか・・・と危惧してしまうこのモヤモヤ感は、つい最近「新国立競技場」の事業者選定結果で感じたものと同質な気がしています。   そして、小保方さんが着想したSTAP細胞が、IPS細胞を超えるような大発見と見るや、豊穣な研究資金を得るためか、小保方さんを広告塔のように利用して戦略的にその業績を世にアピールしたか思うと、論文データの不備が明らかになったり、ES細胞の混入を疑わせる解析データが発表される等の問題が露呈してくると、今度は手の平を返したように小保方さん個人に責任を押し付けて切り捨ててしまう……   実は真相は私達の理解の及ばない別の処にあって、その上で理研という組織あるいは理研に属する研究者が、そのような隠蔽工作を行ったのだとすれば……これは、もう科学の世界だけの特殊な出来事だとは言えません。。

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シンポジウム「B案の主旨 新国立競技場コンペティションを振り返る」

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2016.02.17

「昨秋行われた新国立競技場のコンペティションの結果は既に御承知の通りですが、メディアでは表層のみが伝えられ、その真意が必ずしも正確に報道されているとは思われません。

そこで私達はB案の当事者及び審査員、批評家の方々を迎え、コンペティションにのぞんだ経緯、提案の主旨等を語っていただき、このプロジェクトの意義を問い直すことによって、今後の建築界や社会への理解を深める機会にしたいと思います。

小島一浩、千葉学、塚本由晴、柳澤潤、横河健(五十音順)」

  上記の趣旨で、平成28年2月9日、シンポジウムが開催されました。その模様がYou Tubeで公開されていますので、とりあえずご紹介します。   https://www.youtube.com/watch?v=qxVOA45g2oQ&feature=youtu.be   今回のコンペの経過や結果に対して、大いなる「モヤモヤ感」を抱く建築家有志が、伊東さんを始めB案チームの担当者に声をかけて、このシンポジウムが実現したとの事です。2時間以上に及ぶこのシンポジウムを通して感じたことは・・・   まず第一に、B案がいかに独創的で完成度の高い提案であり、各担当者が見事なチームワークで情熱的にこのコンペに取り組んだ素晴らしい成果である事が改めてよく理解できました。   次にやはり、このコンペの審査過程が果たして適切でフェアなものであったのか・・という疑いがより増幅されたという事でしょう。審査員の一人であった香山先生も、各審査項目の評価点を機械的に積み上げた合計点で評価する採点方法 や、審査委員が各々どのような評点をつけたのかを公表しない審査の進め方に対して、素直に疑問を呈しておられます。 私が一番疑問に感じるのは、一度審査委員で「仮採点」をしてから、一時間程度審査員の間で自由に議論をした後に改めて採点をした結果、A案の合計点がB案を上回ったのだという、コンペの結果発表時の審査委員長の説明の部分です。 この「仮採点」の結果がどうであったのか、そしてこの「仮採点」を踏まえて審査委員の間でどのような議論が為されたのか、ということが、JSCから発表されている議事録でも一切公開されていません。そして最終評価において、A者及びB者に対してどの審査委員が各々の審査項目に何点を入れたのかといった内訳が、おそらく審査員自身も分からない・・といった状況では、審査員の先生方も事務局が集計した採点結果を信じて受け入れる他ないということですね。 ここは、やはり極めて不透明であり、事務局が集計の段階で(本命のAグループを通すために)得点を操作したのではないか?といった疑惑を打ち消すためにも、JSCは各審査委員が付けた配点の詳細を、(匿名でも良いので)きちんと公開すべきです。 このシンポジウムでの「審査の過程では、B案についてネガティブな評価はほとんど出ていなかった」という香山先生のお話に納得し、ますますその意を強くした次第です。   そして何と言っても印象に残ったのは、工期とコストが配点の半分を占める設計施工一体型のコンペ、そしてコンペ前からA者が本命というアウェー状態を十分承知の上で、「今の時代建築家の役割とは何なのかを問い、この官僚支配社会に対して、個人の建築家の存在感を何としても示したかった」という伊東氏の言葉です。 司会の中沢新一氏の表現を借りれば、建築家としての「フェアーな精神」でチームをまとめ上げながら、「大阪の陣の真田幸村のごとく最後まで情熱を傾けて取り組んだ」伊東氏の姿は、我々建築設計に関わる者すべてに、熱く強いメッセージを発しています。  

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