ザ・バンドーかって僕らは兄弟だった

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2020/12/03

 

ザ・バンドの誕生から「ラストワルツ」の解散コンサートまでを、バンドの中心メンバーのギタリスト、ロビーロバートソンの視点から描いたドキュメンタリー映画「ザ・バンド かって僕らは兄弟だった―ONCE WERE BROTHERS  ROBBIE ROBERTSON And THE BAND」を見に久しぶりに映画館へ。夕刻の梅田シネ・リーブルの小さな箱には、勤め帰りと思しき音楽好きが若干名。1960年代の後半から1976年の解散コンサートまでの短い間活動した、いぶし銀のようなロックバンドのドキュメンタリーとなれば、おそらく客は私と同世代ばかりかと思いきや、比較的若い世代も交じっていたのが嬉しい。

製作総指揮の一人は、映画「ラストワルツ」を監督したマーティン・スコセッシ、監督と共同編集は若手のダニエル・ロアーで、コンサート映像やメンバーやバンドと関わりのあるミュージシャンのインタビュー映像を交えながらかっては「兄弟」だった(過去形なのが悲しいけれど)メンバー同士の絆と軋轢を、大半のバンドの楽曲の作詞・作曲者でもあるロビーが思い入れを込めて語る構成になっています。

 

 

the band メンバー

 

1972 年にリリースされたライブアルバム「ロック・オブ・エイジズ」を聞いて、私がこのバンドのファンになったのは大学1年生。当時大学のフォークソング倶楽部(「海はすてきだな」というラブソングをヒットさせた、ザ・リガニーズというバンドがこの倶楽部出身でした)に在籍していた私は、この倶楽部で知り合ったメンバーとバンドを組んで活動を始めたばかりで、まだ黒人ブルースに目覚める前でしたが、ザ・バンドの(今で言うところの)アメリカのルーツミュージックを基礎にしたなんとも言えないグルーブ感と、渋くて泥臭いハーモニーに心を奪われたものでした。特に好きだったのはドラムの南部出身リヴォン・ヘルムのヴォーカル、そしてリック・ダンコの、派手さはないけれどツボを押さえたドライブ感のあるベースも結構好きでした。

当時の文化祭で同じクラブの先輩グループが、ザ・バンドの代表曲の「ザ・ウェイト」を演奏しているのを聞いて、おぬしらやるな!と感心したものです。(ちなみにこの年の文化祭では、僕たち一年生は、皆でビートルズの「You’re  Going To Lose That Girl」を輪唱したのですが、これはこれで結構クオリティー高かったと今でも思っています・笑)

 

その「ザ・ウェイト」ですが、バンドの楽曲の中ではピカ一と言っていい私のお気に入りソングで、スマホの着メロにも採用!あの映画イージーライダーの中で、2台のハーレーダビットソンが自由奔放に荒涼たる砂漠の中を疾走する場面で、この曲が使われています。

全体的には、聖書からの引用と思しき言葉が多く出てきて、ちょっと難解で意味不明な感じの歌詞ではあります。

その中で繰り返し出てくるTake a load off Fanny,  take a load for free  と歌うサビの部分を直訳すると、前半部は「荷物を降ろしてしまえ」(Fannyの意味は複数あるようですが、ここでは省略)、後半部はfreeを「自由」と解釈すれば「自由になるために荷物を取れ」となり、freeを「ただ(無料)」と理解すれば、「荷物を取るのにお金はいらないぜ」というような意味になります。

いずれにせよ、荷物を降ろすのか?取るのか?どっちなの?という感じで、一見矛盾しているようにもみえます。しかしながら、私の勝手な解釈としては・・・後半部を例えばtake a load off  for free  と歌うとより分かりやすいのでしょうけど、それではちょっと語呂が悪いので、offを省略したのではないか?と。このoffが無くても、前半部のフレーズを受けて、後半部の take a load を「荷物を(降ろすために)取る(あるいは選ぶ)」と考えれば、矛盾しないと思います。

要は、「余計なものは持たず、(心の中の)重荷を降ろして楽になろう、気ままに自由に生きようぜ!」というメッセージが繰り返しサビで謳われているわけで、まさにイージーライダーのあの場面にピッタリですね (歌の題名のザ・ウェイトは the weight で、このloadを言い換えたものと思われます)。

ハーレー乗りのちょい悪親父の心が、くすぐられます(笑)

 

曲調は高揚感のあるゴスペル調。そして全体的にはまるで聖書をからかっているようにも見える歌詞。ひょっとしたら、ここでの loadは、lord にかけているのではないかと思ったりしますが、考えすぎでしょうか。

とまあ、こんな感じで聴き手が歌詞の意味を好き勝手に解釈して楽しむのを、この曲の作者であるロビーロバートソンは望んでいるのかも知れません。

(インタビューの中で歌詞に意味なんていらない、みたいな事を言っています)

 

アレサフランクリンをはじめとして多くのミュージシャンに、思い入れを込めてカバーされているこの「ザ・ウェイト」。歌詞の意味云々より楽曲そのものの秀逸さと、今は亡きリヴォン・ヘルムの渋くソウルフルなヴォーカルの魅力で、これからも永く聴き継がれていくことでしょう。

ラストワルツコンサートの中では、ゴスペルグループのスティプルシンガースがゲスト参加、この曲をザ・バンドと一緒に熱唱していますが、これはもうめちゃくちゃ恰好いいので、ぜひ聴いてみてください!

 

 

結局、話が「ザ・ウェイト」のことばかりになってしまいましたが、ザ・バンドの魅力については、また機会があれば書いてみたいと思います!

 

(了)

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