司馬遼太郎記念館探訪

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2017/07/20

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2001年に開館した安藤忠雄氏設計の司馬遼太郎記念館。近くまで行く機会があったので、ぶらりと立ち寄って来ました。

 

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東大阪の住宅地にある司馬氏の居宅が保存され、隣接した敷地に新しいコンクリート打放しの記念館と駐車場が整備されています。入り口の自動券売機で入場券を購入して敷地の中に入ると、係りの方から虫除けのうちわを手渡され、雑木林のような庭を進むと、司馬氏が亡くなった当時のままの書斎がガラス窓も通してのぞめるようになっています。

 

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居宅には司馬氏が執筆の参考にした6万冊の書籍がそのまま保管されているそうで、書斎の奥にその一部を垣間見ることができます。6万冊です!半端な数ではないですね。

 

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庭をさらに進み、ゆるやかな曲線を描くガラスのスクリーンと打放し壁に囲まれたアプローチをたどると記念館の玄関に至ります。まあここは安藤建築(というよりモダニズム建築)の定番マテリアルで、鉄とガラスとコンクリートの単純明快な空間に自然の緑が映えてます。狭いアプローチを歩いていると硬質な素材に囲まれているせいか、同行した家内との会話が妙に響くのが気になりましたが、これも入館の前に来訪者の意識をリセットする演出なのかも知れません(考えすぎか(笑))。

 

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さてさて館内に入ると、膨大な本の壁に囲まれた地下階を含む3層吹き抜けの空間が目に飛び込んできます。これは圧巻。どきもを抜かれました。ここには2万冊の書籍が収まっているそうですが、本物の本は全て居宅の方に保管されているため、居宅にあるのと同じ本を2万冊、展示用として新たに用意したらしい!!本は眺めるだけで手に取ることは出来ません。吹抜け空間の奥には、ステンドガラス(といっても色はついていない)がはめ込まれています。ここでロビーで購入できる記念誌の中にある安藤氏の言葉を少し紹介しておきましょう。

 

「司馬さんが背負ってきた蔵書に囲まれた暗闇に、ステンドガラスを通してかすかな光が入り込んでくる、この空間で、司馬文学を生み出した作家の精神世界を表したかった。司馬さんは、行く先の見えない戦後日本の闇に、先人の偉業を通してこぼれおちるかすかな光を見出しながら、人々に希望を与えてきた。ステンドガラスには、大きさと形、そしてその表情の全てが異なるガラスがはめ込まれている。その不揃いのガラスは、日本人一人一人の、個人の持つ力を最後まで信じていた司馬さんの思いに応えるものであり、それを通して室内に差し込む不揃いの光は、司馬さんが求め、探し続けてきた人々の夢と希望を象徴するものである」 

 

司馬さんやこの記念館に寄せる建築家の熱い思いが伝わってくる文章ですね。安藤さんなりに解釈した司馬さんの思想や業績が、たいへんシンプルでわかりやすいコンセプトで建築空間として具現されています。しかし、膨大な蔵書に裏付けられた司馬さんの業績を表現するのに、司馬さん自身の所有物ではないとは言え、貴重な本を展示物(ディスプレー)のように扱うことにはおそらく賛否両論があるかも知れません。「暗闇に・・・かすかな光」というには、結構ステンドガラスの面積が大きく、かなりの量の光が降り注ぐので、歳月を経るごとに大事な本たちも日焼けで変色していくことでしょう。しかしながらそういった負の側面を差し引いても、この空間は、正に安藤流の直球勝負で、有無を言わさず、訪れる人の心にダイレクトに訴えかけてくる強烈な力を有しています。

 

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上の写真は窓際のステンドガラスと本の壁で囲まれた空間を見上げたものですが、コンクリート打放しの天井の右下の方に、人の顔型の黒ずんだ沁みがあるのがわかるでしょうか?館側の説明によれば、この沁みは司馬さんの「竜馬がいく」の主人公坂本竜馬が天井からのぞいているのだそうで、思わずしげしげと見上げてしまいました。

 

展示ホールには司馬さん自筆の原稿などを納めた展示ケースが置かれており、また地下にはビデオ上映や講演会が出来る小ホールがありますが、司馬遼太郎記念館は、これら建築空間自体が展示作品であり、そこにしばし身を置いて司馬さんの世界に触れる中で、人それぞれが自分なりに思索を深めることが出来る場所なんだろうと感じました。

若輩の私が言うのもたいへん失礼ではありますが、やはり安藤建築はこのぐらいのスケールの小品がいいです。

 

 

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側面の道路からガラスのファサードを見る

 

 

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地下へおりる階段室がアールの壁面から突出しています

 

 

IMG_3038   植栽越しに階段室の前のドライエリアを望む

 

 

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通用口のある敷地の裏側。周辺の住宅地のスケールから突出せず建っています

 

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