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2016.08.21
次に金沢で訪ねたのは、「金沢21世紀美術館」。 私は開館間もない頃に訪れて以来2度目でしたが、今や旅のガイドブック等にも大きく取り上げられ、金沢の新名所となった感のあるこの建物は、たいへんな賑わい。一般的な美術館と比べて若い人が多いように思いました。 建物はシンプルな円形平面で、外は思い切り開放的なガラススクリーンで覆われています。これだけ開かれた美術館はあまり前例がありません。内部も、いくつかの展示スペースが中庭や光の入る回廊をはさんで、分散して配置されていて、迷路のようです。迷路といっても決して閉鎖的ではなく、ごく近くにあって視覚的にはつながっていても、動線的にはぐるりと回っていかないとその場所に行けない・・といったシチュエーションがいくつか用意されていて、展示だけではなく、内部を歩きまわる過程そのものを楽しめる美術館といえます。街中で、ウィンドウショッピングをしている感覚に近いような気がしました。 外部の遊具などが設置された広場に面したロビーには、誰でも気軽に入って思い思いにくつろぐ事が出来、併設されているカフェも開放的です。建物自体では決して主張せず、ただアートを鑑賞するというだけではなく、この場で生じる様々なアクティビティの可能性を広げる事に主眼が置かれているようでした。 ただ一部に汚れが目立つ庇のない大きなガラススクリーンのメンテナンスや、猛暑の午後に西日を浴びて一時的に高温になっているロビーがついつい気になってしまうのは、小心な建築家の哀しい性かも知れません(笑)。
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2016.08.20
夏休みを利用して北陸の旅。富山から能登半島経由で金沢への今度は車でのドライブ旅行です。 どうしても職業柄、建築が気になります。 まず一つ目は富山市内で、RIA・隈研吾・三四五 設計JVの「TOYAMAキラリ」を訪れました。 外観は、ガラスとアルミに石材という地元富山の素材を組合わせて、「キラキラ」させようとしたとの事ですが、時間帯にもよるのかも知れないけど、少し饒舌な印象で、正直あまり美しいとは感じませんでした。「高級な素材をつぎはぎして作った贅沢なバラックのよう」と言ったらちょっと言い過ぎでしょうか。これだけのファサードは決して半端な費用では出来ないでしょうから、富山市民の皆さんの評価を聞いてみたいと思いました。 内部は、銀行とガラス美術館、図書館やカフェなどが複合したもので、建物の中央を斜めの吹き抜けが貫き、それらの用途を含む内部空間全体が大きな一体的空間となっています。火災時等に吹き抜け部分を区画する防火戸やシャッターなどが一切ありません。これは全館「避難安全検証」により可能になったものとの事ですが、これほどまでの縦に重層した空間を一体的に扱った事例は珍しく、1階から最上部のトップライトまでが一気に見渡せる中、各階のエスカレーターがセットバックしながら上階へと登っていく様はなかなかの迫力です。柱や壁の随所が鏡貼り(実際はステンレス鏡面仕上げ?)になっていることも、空間の一体感と視界的な広がりを演出しています。 おしむらくは、斜めの吹き抜け空間に沿って配された冨山産杉材の木製ルーバーが、外観と同様やや煩雑な印象を与えてしまっているのが少し気になりました。このルーバーで斜めの吹き抜けを強調したとの事ですが、逆にこのルーバーがなければ、もう少しこの空間全体がすっきり見えたかも知れません。確かにこのルーバーがなければ「斜めの吹き抜け(光の筒)になっている」ということが、一瞥してわかりにくいかも知れませんが…しかしわざわざその事を感じさせる(説明する)必要があるのかどうか?この建物の空間自体のプロポーションや光の入り方を目にすることで、訪れる個々人が自然にこの空間を受け止めればそれでよいのではないか?という気もしました。 しかしまあここらは好みなのかも知れません。地元産の素材を積極的に用いて木の暖かさを表現し、トップライトから斜めにふりそそぐ光が木漏れ日のような空間を創る(作者談)という設計者のコンセプトは、素直に評価すべきなのかも知れません。 ところで、写真撮影が禁止ではないということで、家内と写真撮影に興じていると、係りの方から2度注意を受けました。 一回目は、展示室の中で、コンパクトな伸縮式の簡易な20センチほどの三脚付きのカメラを持っていると、「三脚は展示を見る人の妨げになるので、はずしてください」と。三脚は、短くたたんでそこを掴めば持ちやすいのでカメラに付けているだけで、伸ばして立てて使うつもりはないのだ、と説明しても、どうしてもはずしてくれと言う。 2回目はロビーで吹き抜け空間にカメラを向けていると、再び係りの人に呼びとめられ、「写真撮影されるであれば折り入って伝えたいことがある。それを説明するので、その後、書面に確認の署名をしてください」と。おそらく自分にカメラを向けられたと感じると、不愉快に感じる人もいるので、充分気をつけて撮してください、という主旨だと思うのですが、署名とまで言われるとさすがに面倒くさくなり、もう撮影は終わりました!と告げて、何とかご勘弁いただいたという次第です。 どこからでも隅々まで見渡させる一体的な複合空間。写真撮影が自由とされている展示室。まだオープンしてまもないこともあり、管理運営する側でも色々と思考錯誤している段階なのかも知れませんが、必要以上の行き過ぎた管理(監視)のために、このユニークな建物が、作り手が意図した施設のあり方と違う方向に行ってしまうことの無いよう願いたいものです。始終どこかから監視されている街など、決して居心地のよいものではありませんから。
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2016.07.27
念願の北海道ツーリングから、無事に帰還しました。 ほっかいどうはでっかいどう、とその昔より(笑)言われている通り、実に雄大でした。 1日目の千歳からのスタート時点で少し小雨が降った以外は好天に恵まれ、同じく1日目に相棒のバイクのバッテリーが突然あがってしまうアクシデントがあったものの、幸いにもパーキングエリア内のガソリンスタンドの近くだったため事無きを得て、以後の5日間、北の大地の自然を存分に満喫することが出来ました。 予想した通り、寒暖の差は半端ではなく、3シーズンのナイロンジェケットの下がぐっちょりと汗ばむ日があるかと思えば、ジャケットの下に厚てのヒートテックを含む2枚のアンダーを着込んでもまだ風が冷たく、さらにジャケットの上にレインスーツを着て走った日もありました。 バイクを降りればちょうど具合のよい気候でも、いざ走り出すと体感温度は全く違ってきます。 さて、以下行程に沿って、ツーリングの様子をご紹介!!
富良野にあるファーム富田のラベンダー畑(一日目)
色とりどりのお花畑を望むデッキで。平日で人手は比較的少なめ
日本海側のオロロンライン。北緯45度を示すモニュメント越しに利尻島を望む(2日目)
電柱も照明もガードレールも無い道が、ひたすらまっすぐ北へと続く
利尻島がかなり近づいたところで一休み。ピースサインしか芸のないのが恥ずかしい
宗谷岬に次ぐ北端、ノシャップ岬よりの眺めです
ついに日本最北端、宗谷岬に無事到着。好天で彼方に樺太が望めました!
こちらはオホーツク海側のエサヌカ線、思わずテンションがあがります!(3日目)
オホーツク海側を網走方向にひたすら走り、PM4時頃ようやくサロマ湖が望めました
能取(ノトロ)岬近くのパーキングエリアで記念撮影。この日はたくさん走りました
国道39号線沿い石北峠からの眺めも、なかなか(4日目)
国道では北海道で最も標高の高い三国峠にて。松見大橋からの樹海の眺めは壮大でした
最終宿泊地の帯広の近く、十勝牧場の白樺並木。慣れない未舗装道路をこわごわ走行。
5日目は、朝ゆっくりしてから、帯広を出発。道東自動車道をひたすら走り、お昼頃に千歳に到着。千歳空港近くでバイクを預けて5日間の感動の旅路を無事に終了しました。
その後元気で時間もある相棒は、苫小牧から単身フェリーに乗って八戸へ渡り、東北地方縦断の旅を続け、私はと言えば、千歳空港で、相棒に教えてもらった松尾のジンギスカン鍋を堪能してから、上階の温浴施設で体をゆっくりと休め、巨大なショッピングセンターとなっている空港内のいくつかの売店でお土産を買い込んで、空路伊丹空港に帰還したのでした。大型バイクに乗り始めて7年めになりますが、何故ここまで惹かれるのでしょうか。
友人達からは、あぶないぞ、気をつけろよ、4輪とは違うぞ、といったどちらかと言えばネガティブな意見の方が多いですね。私としては事故に遭った場合は大怪我、もしくは命の危険もあるリスクはもちろん承知の上で、自己責任で乗っているわけですが、安全運転にとことん徹すれば、バイクの経験の無い人が想像するほど危険なものではないと思っています。
安全運転とは…・経路をよく調べてから走る、・無理な追い越しや「すり抜け」は決してしない、・車道の真ん中を堂々と車の流れに従って走る、・停車時や始動時には、とにかく慎重に気を引き締めて、うっかり立ちゴケ(これが結構怖いです)などしないよう細心の注意を払う(傍目にはあまり格好よくないかも知れませんが(笑))・・等々でしょうか。
暑さ寒さ、雨風などの、まさに直に自然を相手にする行為であることが、バイクを駆る魅力の一つでしょう。ハーレーの空冷vツインの力強い鼓動を聞き、刻々と変化する風景を楽しみながら、北海道のようなスケールの大きい大自然の中を、渋滞や信号に煩わされることもなく、どこまでも走り抜ける快感は格別です。
ツーリング中もたくさんの同好の士と出会いました。北海道に限ったことではありませんが、すれ違う時に互いに手を上げて会釈しあうのが、ライダーの間での暗黙のルールとなっています。中には大きく両手を上げて挨拶してくれる輩もいますが、これはさすがに危ないので真似しない方がよさそうですね(笑)。
近年、リターン組も含めて、私達のような熟年ライダーが増えているようです。個人的には、少年時代、自転車に乗って長い坂道を猛スピードで下り降りるのに夢中になっていたあの頃の、爽快でスリリングな感覚が蘇ってくる気がします。
というわけで、北海道ツーリングは今後もやみつきになりそうですが、体力の続く限り、超安全運転で楽しみたいと思っています。
度々道を間違うきまぐれな先導車 (私のことです) に辛抱強く追随してくれた相棒と、1300キロに及ぶ全行程を軽々と走破してくれた愛車ソフテイルに感謝です。
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2016.07.07
いよいよ念願の北海道ツーリングの日が近づいて来ました! 愛車はすでに陸送会社さんに預けたので、今頃他のバイクと一緒に北の大地までゆっくりと移動している事でしょう。 北海道へのバイク陸送という便利なサービスを提供してくれるのは、高栄運輸(株)のEZOライダー事業部。サイドバックに一杯詰め込んだ荷物やヘルメットもしっかり一緒に運んでくれるので、ずいぶんと便利です。 北海道での、おすすめツーリングコースや食事処、ホテルなども気軽に紹介してくれるので、私のような、始めて北海道ツーリングをめざす、時間に余裕の無いライダーにとっては、本当に心強い味方です。 http://www.ezorider.net/ さて、今回のツーリングで一番心配なのはウェア。北海道は寒暖の差が激しいので、暑さと寒さ(特に雨天時)両方の対策が必要になります。Tシャツ一枚で走れる日もあれば、3シーズンジャケットの下に防寒のアンダーウェアを着込んで走らなければいけない時もあるそうで、いきおい準備するウェアの種類と数が増えてしまいます。 ジャケットを着込んでツーリングしていたところ、急に暑くなってきたので、ジャケットの胸元を思い切り開けて走っていたら、胸元にアブが飛び込んできてエライ目にあった…なんていう話を、陸送会社の担当者さんから聞きました。野性の鹿などの動物が飛び出してくることもよくあるそうで、まさに自然を相手にしている・・という感じのようですね。安易な野宿は、熊に襲われる恐れもあるので、厳禁だとか。 さて練りに練ったツーリングルートですが・・・ 一日目:伊丹から千歳空港まで、午前中のフライトの後、千歳空港の近くでバイクを受け取り、午後から即、ツーリング開始。まずは北海道観光の定番、富良野・美瑛を経由し、ラベンダーや美しい丘の風景を堪能してから、旭川泊。宿は天然温泉とご当地食材のバイキング朝食が嬉しいドーミーイン。 二日目:旭川から、国道40号をしばらく北上、ひまわり畑やソバ畑の景色を楽しんだ後、道道119号を海側に向かい、ライダー憧れの道である日本海沿い「オロロン街道」を、夕暮れ時の利尻・礼文島や、風力発電の風車を仰ぎ見ながら北へひた走って、稚内泊。この日は、まさに今回のツーリングのハイライトです。 三日目:稚内からノシャップ岬、日本最北端の宗谷岬を経て、今度は東側オホーツク海沿いの「エサヌカ線」を通り、あとは国道238号でひたすら網走を目指します。道中、サロマ湖の雄大な景観も堪能。この日が熟年ライダーには一番の強行軍となる予定ですが、出来れば能取岬にも立ち寄ってから、何とか網走泊。 四日目:網走から国道39号線経由で、北海道で一番標高の高い三国峠の雄大な景色を楽しんだ後、国道273号をゆっくり南下。十勝牧場の白樺並木を通り抜けてから、帯広泊。 五日目:最終日は、帯広から道東自動車道経由で千歳まで一気に走って、空港近くで再びバイクを預けます。時間があれば札幌市内の空気を少し吸ってから、家族へのお土産を買い、其の日の内に空路伊丹へ。バイクは、2週間遅れで、ようやく自宅まで戻ってくる予定。 という、まさに北海道を最大限満喫しようという欲張ったスケジュール。文字にすると意外に簡単ですが、さてさて果たしてどんな旅になるのか・・今からどきどきわくわくです。(続く)
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2016.05.09
GW合間の一日、岡山県津山市に建つ近代建築の知られざる傑作「津山文化センター」を訪ねました。1965 年に完成、昨年50周年を迎えたこの建物は、早稲田大学理工学部建築学科を卒業、清水建設設計部を経て、旧逓信省営繕部設計課に勤務した後、1957年に事務所を設立した、一般的にはほぼ無名と言える建築家「川島甲士」氏の40歳の時の作品です。 最も特徴的なのは、日本の伝統的な寺社建築の屋根を支える持ち送り工法である「斗キョウ」構造を、近代建築を象徴する材料であるプレキャストコンクリートで構築していることでしょう。 逆台形状3層の精緻で力強い「斗キョウ」が伸びやかな水平線を形作りながらフラットな屋根を支える外観のシルエットは、冒頭の写真にあるように抜群に美しいプロポーションで、建物にアプローチしながらしげしげと眺めていると本当に惚れ惚れします。 ホールのある本体とは分離して建てられている展示ホールの壁面は、グラフィックデザイナー「粟津潔」氏によるウェーブ状のレリーフが施されていて、これもなかなかの迫力で見ごたえ充分。本体部分の「斗キョウ」との対比も鮮やかです。
右側が本体とは分離した展示ホール
それにしても、逆台形状の構造のためか、築50年を経過してもコンクリートの汚れや劣化が少なく、当時のままの精緻で美しい外観が維持されているのには驚きです。 1階ホワイエは、外部に面した吹抜け空間。上部には立体格子に照明を絡めた建築化照明が。梁の上を歩くランプ交換は、命綱必須の決死の作業(笑)との事でした。ホワイエ上部の梁と建築化照明
「斗キョウ」のある外周通路
「斗キョウ」はプレキャストコンクリートの部材を一つ一つ組み上げて作られています。内側には近代建築で主流であったスチールサッシュ。外周通路がクッションとなり綺麗に保たれています。 ホール内部も見せていただきました。局面を描く天井はベニヤ下地にクロスを張って作られているそうです!外観とは対照的なインテリアですね。黒い楕円形の3つの穴は巨大なスピーカー。 ホール側面はコンクリート打放し仕上げで、音響効果を考慮したというリブパターンが施されています。音響設計は、なんとあの大隈講堂を設計した佐藤武雄氏が手掛けたそうです。 天井中央の大きなシャンデリアもこの種のホールでは珍しいですね。ホワイエの一角に鎮座する模型
中2階側出入り口のあるシンメトリーな外観
かって天守閣のあった鶴山公園のふもとに経つ「津山文化センター」。軒先に向かって広がっていく外観は、台形状の鶴山城の城壁との対比が図られていると言えますが、実は、川島甲士は京都国際会館のコンペでも、この「津山文化センター」とそっくりの逆台形状の「斗キョウ」のある案を提出しています。日本独自の様式を近代的な材料と技術で再構成したこの案に、よほどの思い入れがあったのでしょう。自らが信ずる新しい時代の日本建築を何としても生み出したいという、当時の気鋭建築家の熱意がひしひしと伝わってくる作品でした。 近々に耐震改修が施される予定とのことですが、この建物に充分な敬意を払った上で、原型の魅力を損なわない方法で慎重に実施して欲しいと思います。カテゴリ:
2016.04.13
恥ずかしながら、シニア世代になってから一念発起して、自動2輪免許を取得しました。 まずは2008年に中型免許を取得、1年間はホンダのCB400でバイク入門、1年後には念願の大型2輪免許を取得して今年で早7年目に入り、現在は、愛車 Harley-Davidson の Heritage Softail Classicで、時間のある時、自由気ままにツーリングを楽しんでいます。
管理事務所兼用のガレージに鎮座する愛車です。
今年の夏は、同好の士である旧友と北海道ツーリングを計画中! 日本最北端の宗谷岬はマストとして、さて他はどのルートを走破するか、ロードマップを睨みつつわくわくしながら計画を立てています。今は、予めバイクを千歳空港の近くまで陸送してくれる便利なツーリング支援会社があり、伊丹か関空から北の大地まで1時間半ほどのフライト・着いたその日から即ツーリングが楽しめるので、我々時間的余裕のない者にはとても便利です。 初めての北海道ツーリングの様子、追ってご紹介していきますので、ぜひご笑覧ください!!カテゴリ:
2016.01.29
2016年1月31日で一般公開を終了するモダニズム建築の名作、神奈川県立近代美術館をこの目に焼きつけようと、鎌倉まで出向きました。 ますは新幹線車中からの富士山の雄姿をご紹介。運よく好天にめぐまれ、先の寒波で、山頂にたっぷりと雪をいただいた見事な姿を撮影できました。 昼過ぎに鎌倉駅を降りると、平日にもかかわらず結構な賑わいぶりにびっくり。鎌倉観光スポットでお馴染み小町通り商店街を、お洒落な店主さんたちの呼び込みの声を聞きながら徒歩10分あまり歩いて美術館に到着。チケット売り場にはすでに行列が出来ていて、みんな思い思いにこのシンボリックで端正な正面外観を眺めながら、記念撮影などに興じています。 1951年、ル・コルビジェに師事した坂倉準三の設計で、鶴岡八幡宮の敷地内に日本で最初の公立の近代美術館として開館したこの建物は、65年に亘ってこの地で人々に愛され続けてきましたが、まもなく美術館としての役割を終えようとしています。モダニズム建築としての歴史的な評価も高く、閉館後は鶴岡八幡宮の施設として引き続き利用されることが決まっているとの事です。 コルビジェの建築思想に基いて、1階はピロティー形式として建物を持ち上げ、隣接する「平家池」にせり出す2階部分を繊細な鉄骨の列柱が支えるその姿には、近代建築と、桂離宮に代表される日本建築の伝統的な空間の趣きとを融合しようという意図が、強く感じられます。私は不覚にもこの建物を実際に見たのは初めてだったのですが、池や中庭などの外部空間が建築の中に巧みに取り込まれ、周辺環境と建築の各部分が連続し一体化したこの空間の心地良さは、やはり実際に体験してみないとわかりません。外部空間の要所に配された彫刻たちも生き生きとしていて、まさに「この場に最もふさわしい美術館」のあり方が提示されているのです。人々は単に美術品自体を鑑賞するだけではなく、この気持ちのよい空間全体を全身で体感しながら、伸び伸びと思い思いの時を過ごすことが出来ます。この環境に身を置くことの何とも言えない心地良さが、この美術館が建築の専門家だけではなく、一般の人々に長く愛されてきた所以なのだと思えました。 2階にある小さな喫茶室で「平家池」を眺めながら一服していると、ここで順番待ちをしている間に知り合ったと思しき熟年カップルが、仲良く入って来て一つの卓を囲んでいました。羨ましいな(笑)などと思いながら、聞くともなく聞いていると、女性の方は学生時代にこの建物を訪れた時の思い出などを懐かしそうに語っておられ、この建物が育んできた時間が、同じような感慨を持つ人たちの思いをつなぐ役割を果たしていることに感銘を受けました。「やっぱり建築も捨てたもんじゃない」建築を志した頃の情熱を少し思い出させてくれる時間でした。 隣接する新館は1966年に同じく坂倉準三の設計で増築されましたが、耐震性に問題があるとのことで、今は内部は公開されておらず、外観だけの見学となっていますが、こちらはコルテン鋼(錆びた鉄)を柱・梁に使用した日本建築の「真壁造り」をイメージさせる構造で、展示室はガラスのカーテンウォールで池と一体化する空間です。坂倉事務所在籍時にこの建物を担当した室伏氏のインタビュー映像がロビーで流されていたのですが、施主との打合せ前には、室伏氏が提案したガラスの多い展示空間に難色を示していた坂倉準三が、打合せの場で当時の副館長・土方定一氏も開放的な展示室が良いと思っていることが分かると「私もそう思っておりました!」とすかさず答えたという、思わず笑いをさそうエピソードが暴露(笑)されていて面白かったです。室伏氏も、もう50年経って時効だと考えたのでしょうね。 建物は「平家池」の対岸の道路に平行に配置されており、坂倉が池越しの眺めを重視していたことがわかります。今は対岸のレストランや道路沿いの植栽のせいで、その池越しの姿が充分に望めないのは残念ですが、レストラン近くの池のほとりからの外観を撮影することが出来ました。白い箱が宙に浮いたような2階建て本館と、真壁風の簡素な平屋建て新館との対比が明快です。 日帰りの駆け足探訪でしたが、優れた建築と共に存る「場の力」を、改めて実感することが出来た有意義な一日でした。
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2015.11.23
詩仙堂を後にして、次に向かうのは、歩いて数分の距離にある「えん光寺」。徳川家康が、国内教学の発展を図るために、伏見に学校として建立したのが始まりだそうです。とても広いお寺です。 山門を入るとすぐに枯山水の庭、さらに中門を抜けると「十牛之庭」という庭があり、ここの紅葉のじゅうたんは圧巻です(下の写真)。冒頭の写真はこの「十牛之庭」の趣を演出する水琴窟で、「えん光寺型」と呼ばれる盆型の手水鉢を用いた珍しいものだそうです。竹に紅葉、そして周囲の樹々や空を映す鏡のような水面は、清々しい京の風情を感じさせてくれます。 境内の山上に登ると、なんとそこには家康の「歯」を祀った東照宮がひっそりとたたずんでいます。この高台からは北山や嵐山の山々と共に洛北の景色が一望できます。日が沈む頃には、西の空に落ちる夕陽がさぞ美しいだろうな・・と思いながら、次の目的地を目指して、先を急ぐことにしました。 次に目指すは「曼殊院門跡」です。えん光寺からは少し距離がありますが、洛北の落ち着いた街並みを眺めながらしばし坂を登ってようやく到着する頃には、ぼちぼち日も暮れ始め、いよいよライトアップの時刻となりました。 この「曼殊院」は桂離宮と類似した様式を持つ江戸時代初期の代表的書院建築で、桂離宮と同時に作られたと言われる違い棚のある十雪の間をはじめ、狩野探幽筆の障壁画や襖をじっくりと楽しむことが出来ました。座敷や縁側から眺める庭園は、小堀遠州好みの枯山水。色づき始めた紅葉に松の緑、白砂がライトアップに映える幽玄な世界を堪能しました。
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2015.11.22
紅葉シーズンになると、京都の紅葉の名所を巡るのが、ここ数年の恒例になっていますが、今年は、少しだけ北の方に足を伸ばして叡山電鉄の一乗寺駅界隈から散策スタートしました。 まずは、元徳川家の家臣で、大坂夏の陣で活躍した石山丈山と言う人が造営した詩仙堂(丈山寺)。簡素な門をくぐり、趣のある石段を上って老梅関と名づけられた門から建物の中に入ると、ほどなく有名な「詩仙の間」に至りますが、この「詩仙の間」から望む庭園が最大の見所。 詩仙の間から庭に向かって張り出した「しょう月楼」へと続く開放的な座敷より、白い砂利に映えるさつきの緑との対比が効いた紅葉が見事です。(この日は少し時期が早く、本格的な紅葉まであともう一息という状態でしたが・・・) 座敷からの眺めをゆっくりと楽しんだ後は、庭に降りて庭園を散策。色づき始めた紅葉をより身近に感じながら、文人丈山が、泉や滝をモチーフに趣向を凝らした庭園や、先の詩仙堂やしょう月楼のある建物の美しい瓦屋根のシルエットを楽しみました。(続く)
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2015.09.24
シルバーウィークを利用して、遅ればせながら姫路城に行ってきました。お城への入り口広場から遠くに仰ぎ見る、外壁・屋根共に白亜にリニューアルされたその姿は、まるで新品の模型を見るかのような優雅で端正な美しさでした。 弓形に美しく積み上げられた石垣を眺めながら、多くの見物客に混じって天守閣を目指すこと約1時間、ようやくお城への入り口に到着。内部の木の柱や梁の骨太な軸組みを真近に見つつ何段もの階段を登り、最上階にたどり着くと、超高層ビルにも匹敵するその高さからは、姫路市街がダイナミックに一望できます。 超高層ビル並みの天守閣からのパノラマ。 瓦同士をつなぐ漆喰が優美な屋根の白さの秘密。