RE-SOUL清水谷
所在地 | 大阪市天王寺区 |
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用途 | 集合住宅・事務所 店舗 |
敷地面積 | 395.25m² |
建築面積 | 269.10m² |
延床面積 | 1387.47m² |
構造 | RC造8F・B1F建 |
竣工 | 1995年10月 |
かつて、この場所には、気持ちの良い中庭のある、T荘と言う木造アパートがあった。当時としては、なかなかにハイカラな建物で、結構モダンな人達が、集い住んだという。
何度かテレビドラマの舞台にもなったと、住人さん達は誇らしげに話していた。
時代は流れて建物は老朽化したが、住人さん達の暖かいコミュニティは、時を得るに従い熟成した。
思い切って建て直すことを決意してから何度も話し合いを重ねたが、彼らのこの場所への愛着の強さと、互いを思いやる気持ちが印象に残った。色々とあったが、そのうちビール片手に雑談に花が咲く様になり、最後は皆笑顔で引っ越して頂いた。
時間と場所の持つ力を実感した貴重な体験だった。建て直すにあたって、この場所の持っていた力を生かしたいと考えた。
かつての気持ちの良い中庭は、2つの棟をつなぐ空間に置き換えた。
2~3階のオフィスゾーンでは、それはトップライトのある共用空間となり、各々の事務所に適度な距離と快適なゆとりを与えている。
又、4階から上の住居ゾーンでは光庭となり、外部空間が建物の中に取り込まれる。
住戸は全て角部屋となり、単身用住戸とはいえ、通風・採光は良好である。
この場所の歴史を調べているうちに、かつて難波宮のあった頃、敷地の東側の程無い位置に、朱雀大路(難波大道)が通っていたことが判った。
当時の街路パターンは今では殆ど失われているが、真北に沿った均一なグリッドを持っていたらしい。
天王寺区内では、北山町から勝山辺りに通るこの古道がこの軸に一致している。
秀吉の時代にその骨格が出来たと言われる現在の街路パターンの中に、遠い難波宮の時代の都市の秩序を、密かに挿入しようと考えた。
低層部の壁面とバルコニーの面、そして、ELVシャフトと階段は、真北に沿って配置した。
現在の街路パターンからは約5°振れている。
時の積み重なりを感じる様に、化粧コンクリートの壁面には45cmピッチで横ラインのボーダーを設け、小ダタキ仕上を施した。
ELVシャフトと階段の壁は、土のイメージした素材で仕上げている。
一方、現在の街路パターンに沿う2つの壁は、ソリッドな青味のタイルである。
この建物の内部空間において、各々異なる素材をまとった新旧2つの秩序が、互いに響きあう場所が、前述の2~3階ホール、1階住戸専用エントランス、住戸ゾーンの廊下等の共用空間である。
集まって住まう、あるいは働く場所を意味付けるのは、共用空間の質に負うところが大きい。
T荘の中庭も、住人さん達の日々の生活を生き生きと育んだことだろう。
時の流れは連綿として途絶える事は無い。
新たな息吹を与えられたこの場所が、新しい住人達に再び長く愛されることを祈っている。