3つめの偽装

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2015.10.20

横浜のマンションで、杭工事の偽装が発覚しメディアをにぎわしています。最近では、東洋ゴム社による免震ゴム装置の試験データ改ざん、そしてフォルクスワーゲン社によるディーゼル車の排ガス測定時プログラムの不正問題に続き、特に今回の杭施工データの偽装は、建築の監理業務に携わるものにとって、大変ショッキングな事件です。 仮に私たちがこの工事の監理に携わっていたとして、この不正を見抜けたのかと問われれば、恥ずかしながら甚だ心もとない返答となるでしょう。基本的にモノ造りは、それに関わる技術者の責任においてなされるものであり、それを第3者が検査・確認するにしても、その工事を担う専門業者への信頼感を前提に進めないことには、現場は廻って行きません。目に見えないところでも、きちんと責任感を持ち、決して手を抜かずに自分がやるべき仕事をするのが、技術者としての矜持であるはずで、私が建築の世界に飛び込んだ時も、当然そのように教えられました。 しかしながら、東洋ゴムや、フォルクスワーゲン社、そして今回の旭化成建材といったその業界ではトップクラスの実績を誇る一流企業の担当者が、何故にこのような「悪意ある」と言うべき偽装に手を染めることになってしまったのか、充分に検証されなければなりません。 例の姉歯建築士による耐震偽装問題を端緒として、確認申請の制度が大きく変革され、以後何回かの建築基準法の改正を経て今日に至っています。これは、いわば構造設計者の良心に任せておくだけでは駄目であって、専門の審査機関で耐震偽装等が無いように、細かく設計内容のチェックをするべきである・・という考え方の制度ですが、個人的には、必要以上に審査機関との協議が長引いたり、審査担当者と私たちとの間で構造的な見解が一致しない、などの問題を度々経験した結果、この制度に疑問を持っている一人です。私としては性善説を支持したい、もし仮にそうでなければ、モノ造りなどというものは、現実的に立ち行かないと思うが故なのです。 ところが、今回の杭工事の偽装問題は、そのような甘い?考え方に再び大きな警笛を鳴らすものです。今後は、工事着工してからの検査に関しても、より制度的に厳格化される方向に進むであろうと思われます。原因は種々あれど、人は過ちを犯す生き物であり、建築現場におけるその過ちが、ともすれば人の生命の安全を脅かす場合もあるという前提で、いかにそのような過ちが起きないようにするか・・・。もちろん制度だけで全てが解決できるものではないでしょうから、まさに、建築に関わるもの全てに重い課題が突きつけられた事件であると言えるでしょう。

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